2008年11月08日

急性閉塞性化膿性胆管炎

急性閉塞性化膿性胆管炎(AOSC:acute obstructive suppurative cholangitis)
【概念】急性胆管炎のうち、ショックなどの激烈な症状を伴うものである。その発生には胆管内に著明に増加した細菌の存在し、胆道内圧の急激な上昇により細菌またはエンドトキシンが血流内に大量に逆流するために生じると考えられる。Reynolds5徴をきたした重症胆管炎や概念的に迅速な胆道減圧を行わないと救命できないという最重症の胆管炎に対して用いられてきた。しかし、その定義が曖昧で混乱がみられ現在は使用されなくなってきている。
(参考)Longmireによる胆管炎の分類
Longmireは,急性化膿性胆管炎を,悪寒戦慄を伴う間歇的発熱,右上腹部痛そして黄疸の3徴のみのものとし,これに嗜眠または精神錯乱とショックをきたしたものを急性閉塞性化膿性胆管炎(AOSC:acute obstructive suppurative cholangitis)と呼称。さらに,急性の細菌性の胆管炎を以下のように分類している。
T. 急性胆嚢炎の波及による急性胆管炎
U. 急性非化膿性胆管炎
V. 急性化膿性胆管炎
W. 急性閉塞性化膿性胆管炎
X. 肝膿瘍を伴った急性化膿性胆管炎
【原因】胆道閉塞と胆汁中の細菌増殖(胆汁感染)により起こる。
胆道閉塞の原因のうち頻度が高いのは,総胆管結石症・良性胆道狭窄・胆道の吻合部狭窄・悪性疾患による狭窄。
原因菌は大腸菌、クレブシエラが多い。
【症状】急性胆道炎を疑うべき症状としては,発熱,悪寒,腹痛,黄疸,悪心,嘔吐,意識障害がある。Reynolds5徴=Charcot3徴(@腹痛,A黄疸,B発熱)+Cショック+D意識障害
【検査】<血液検査>白血球数,CRP,AST,ALT,ALP,γ-GTP,ビリルビン,アミラーゼ(急性膵炎との鑑別),血小板数,BUN,クレアチニン(重症度判定に必要)。
<画像診断>超音波検査(急性胆道炎が疑われるすべての症例で最初に行う)。CT,MRI(MRCPも含む)のいずれかも有用。単純X線写真は,イレウス,消化管穿孔,他疾患との鑑別の上でも重要である。
血液培養、胆汁培養も積極的に行った方がよい
【診断】           急性胆管炎の診断基準
A 1.発熱*
  2.腹痛(右季肋部または上腹部)
  3.黄疸
B 4.ALP,γ-GTPの上昇
  5.白血球数,GRPの上昇
  6.画像所見(胆管拡張,狭窄,結石)
疑診: Aのいずれか+Bの2項目を満たすもの
確診: (1)Aのすべてを満たすもの(Charcot3徴)
  (2)Aのいずれか+Bのすべてを満たすもの
ただし,急性肝炎や急性腹症が除外できることとする。
*悪寒・戦慄を伴う場合もある。

急性胆管炎の重症度判定基準
重症急性胆管炎
急性胆管炎の内,以下のいずれかを伴う場合は「重症」である。
(1) ショック
(2) 菌血症
(3) 意識障害
(4) 急性腎不全
中等症急性胆管炎
急性胆管炎の内,以下のいずれかを伴う場合は「中等症」とする。
(1) 黄疸(ビリルビン >2.0mg/dL)
(2) 低アルブミン血症(アルブミン <3.0g/dL)
(3) 腎機能障害(クレアチニン >1.5mg/dL,尿素窒素 >20mg/dL)
(4) 血小板数減少*( <12万/mm3)
(5) 39℃ 以上の高熱
軽症急性胆管炎
急性胆管炎のうち,「重症」,「中等症」の基準を満たさないものを「軽症」とする
*肝硬変等の基礎疾患でも血小板減少をきたすことがあり注意する。
付記:重症例では急性呼吸不全の合併を考慮する必要がある。
急性胆管炎と鑑別すべき疾患としては,急性胆嚢炎,胃十二指腸潰瘍,急性膵炎,急性肝炎などがある。
【治療】AOSCは敗血症性ショック、DICから多臓器不全へ進展し重篤化するため、早期に胆道内圧の改善と抗生物質投与を行う。
       急性胆管炎の治療のフローチャート
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<急性胆管炎の診療指針>
急性胆管炎を疑った場合には診断基準を用いて診断し,さらに重症度判定を行い,重症度に応じた治療を行う。頻回に再評価を行う。急性胆管炎では,原則として,胆道ドレナージ術の施行を前提とした初期治療(全身状態の改善,感染治療)を行うが,その際,急変時に備え,呼吸循環のモニタリング下に,全身状態の管理を心がけることが大切である。
(1) 重症例(ショック,菌血症,意識障害,急性腎不全のいずれかを認める場合):適切な臓器サポート(十分な輸液,抗菌薬投与,DICに準じた治療など)や呼吸循環管理(気管挿管,人工呼吸管理,昇圧剤の使用など)とともに緊急に胆道ドレナージを行う。
(2) 中等症例:初期治療とともにすみやかに胆道ドレナージを行う。
(3) 軽症例:緊急胆道ドレナージを必要としないことが多い。しかし,総胆管結石が存在する場合や初期治療(24時間以内)に反応しない場合には胆道ドレナージを行う。
注:「併存疾患がある場合」「急性膵炎が併存する場合」「原疾患が悪性疾患である場合」「高齢者」「小児」では,軽症,中等症であっても重症化しやすいため,慎重に対応する必要がある
初期治療は原則として,胆道ドレナージ術の施行を前提として,絶食の上で十分な量の輸液,電解質の補正,抗菌薬投与を行う。重症急性胆管炎では緊急的な胆管ドレナージが必須である。また,中等症〜軽症胆管炎であっても,抗菌薬投与などによる保存的治療が奏効せず状態に改善が認められなければ(12〜24時間は慎重に観察),可及的速やかに胆管ドレナージを行うべきである。
<胆管ドレナージ>
@内視鏡的胆道ドレナージ(EBD)
A経皮経肝的胆道ドレナージ(PTCD)
B開腹ドレナージ
<手術適応>
@胆嚢穿孔が疑われるとき(blumberg徴候、胆汁性腹膜炎徴候などがみられるとき)
A蓄膿状態が強く、胆嚢が緊満しているとき
BEBD、PTCDが困難、不可能な場合
<抗生剤>
[軽症:使用例]
経口ニューキノロン系薬
レボフロキサシン(クラビット)
シプロフロキサシン(シプロキサン)
経口セフェム系薬
セフォチアムヘキセチル(パンスポリンT)
セフカベンピボキシル(フロモックス)
第一世代セフェム系薬
セファゾリン(セファメジン)
広域ペニシリン系薬
アンピシリン(ビクシリン)
ピペラシリン(ペントシリン)
[中等症、重症:使用例]
中等症第1選択薬
第二世代セフェム系薬
セフメタゾール(セフメタゾン)
フロモキセフ(フルマリン)
セフォチアムヘキセチル(パンスポリン)
重症第1選択薬
第三,四世代セフェム系薬
セフォペラゾン/スルバクタム(スルペラゾン)
セフトリアキソン(ロセフィン)
セフタジジム(モダシン)
セフォゾプラン(ファーストシン)
セフピロム(ブロアクト)
グラム陰性菌が検出された場合
モノバクタム系薬
アズトレオナム(アザクタム)
重症第2選択薬
ニューキノロン系薬
シプロフロキサシン(シプロキサン)
パズフロキサシン(パシル)
嫌気性菌が検出あるいは併存が予想される場合
上記のうち一剤+クリンダマイシン(ダラシン-S)
カルバペネム系薬
メロペネム(メロペン)
イミペネム/シラスタチン(チエナム)
【予後】AOSCは予後不良。死亡率約30%ほど
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2008年11月15日

消化管出血への対応

吐血、下血(タール便)を主訴とするpatientへの対応
1) 問診
   吐血が鮮紅色か黒色か。いつからタール便があったか。
   吐き気、腹満感の有無。嘔吐後の吐血か否か。腹痛の有無。
   抗凝固剤、抗血小板剤の服用の有無。
   消炎鎮痛剤、ステロイドの服用の有無。
   肝疾患、心疾患、血液疾患の既往等の有無を確認。
2) 緊急血液検査(救外セット)を行う。
3) 胸腹部X線撮影(立てない時は臥位胸部と左側臥位腹単)を撮る。free airの有無をcheck!
4) 強い腹痛と筋性防御があればfree airが確認されなくても外科医にconsult。
5) X-pでfree airがある場合、消化器内科では緊急内視鏡は施行しない(消化管穿孔)。外科医にconsult。
6) 新鮮血吐血(軽度なMallory-weiss症候群は除く)は原則緊急内視鏡とする。activeな出血かどうか判断の困難な場合は胃管の挿入を試みる。(但し挿入困難な時は無理に挿入しない!!鼻出血の恐れあり。)胃管の挿入後は注射器でairを入れtube先端が胃内にある事を確認してから水を200〜300ml注入する。数十秒後に吸引し新鮮血が引けると緊急内視鏡の適応とする(ただしタール便の場合はヘモグロビン低下傾向等臨床的にactiveな持続出血が疑われる場合も適応とする)。コーヒー残渣様内容物が引けるのみで臨床的にactiveな持続出血が疑われない場合入院、保存的管理と待機的な処置をとり翌朝緊急内視鏡検査を行う)。病歴で嘔吐後の吐血或いは肝硬変症の既往のある場合は Mallory-weiss症候群、食道・胃静脈瘤破裂の可能性があり胃管は挿入しない!!
7) 十分な輸液及び、輸血にもかかわらずshock状態を離脱できない時、緊急手術を考え中心静脈を確保する。この場合、外科的処置を検討する必要が有り、消化器内科、外科、及び放射線科のDr.にconsult。治療方針を検討する(図1参照)。
8) 下部消化管出血のほとんどは保存的療法(絶飲絶食、安静のうえ止血剤を加えたの輸液<必要なら輸血>を行う。)にて軽快する。新鮮血下血(虚血性大腸炎、憩室)の時は、原則として入院、保存的に管理し翌朝に緊急内視鏡検査をする(ただし頻回の新鮮下血と著明なヘモグロビン低下が見られる重症の場合は夜間内視鏡検査の適応とする)。

★緊急内視鏡検査を施行する前に…  
◎ 必ず承諾書を取り、口頭でも出血原因による内視鏡的止血術とその偶発症、内視鏡的加療困難な場合での次のstep(緊急手術等)を説明する。
◎ 著明な貧血(Hb≦8.0g/l)時は輸血をorderしMAPを確実投与。Hb>8.0g/lの貧血であっても緊急内視鏡検査の前に処置中の再出血を考えMAPをstand byする。(勿論、輸血承諾書も取る。)
◎ 輸液、酸素投与を行いつつvitalを保持してから緊急内視鏡検査を施行する。

★出血性胃十二指腸潰瘍保存的治療マニュアル   
絶飲絶食、安静のうえ下記の輸液(必要なら輸血)を行う。
DIV
1) ヴィーンD500ml+アドナ25mg+トランサミン250mg+ザンタック1A
2) アミノフリード500ml+ネオラミン3B+VitC500mg
3) ヴィーンD500ml+アドナ25mg+トランサミン250mg+ザンタック1A
4) アミノフリード500ml 
を24時間で施行。

図1.上部消化管出血対応マニュアル
      (日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡ガイドラインより引用

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[緊急内視鏡コール前チェックリスト(安全リスト)]
□ ショック状態の有無評価
      ショック状態であれば輸液、輸血等の適切な処置を行う。
□ 血液検査、心電図、胸腹部X線(立位又は左側臥位)
□ 承諾書の説明、署名
□ 右腕或いは下肢の輸血用ルート



posted by ヨン at 23:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 消化器

消化管穿孔

消化管穿孔には大別して上部消化管穿孔と下部消化管穿孔があり、上部の場合は保存的にみれることも少なくない。下部の場合はまず開腹手術が必要となる。


原因 : 上部消化管穿孔 … 消化性潰瘍穿孔、胃癌穿孔、ERCPによる十二指腸穿孔、腹部外傷性の小腸穿孔など
下部消化管穿孔 … 大腸癌穿孔、大腸憩室穿孔、大腸ファイバーによる穿孔、虚血性腸炎による穿孔など
診断 : 突然の腹痛。腹膜刺激症状がみられるが、消化性潰瘍穿孔の場合は比較的軽度のこともあり、歩いて受診する患者もいる。

腹部単純X写真… 立位または左側臥位正面でフリーエア。ごく少量のエアで、しかも痛みが軽度の場合は保存的に経過をみることも少なくない。なお、腹腔内遊離ガス像の確認にはCTやエコーも有効である。

* 十二指腸穿孔では後腹膜腔内ガスが見られることに注意…右腎輪郭や腸腰筋陰影の鮮明化が認められる。怪しければ、かならずCTで確認すること。
* 腹膜刺激症状、いわゆるデファンスは脊髄反射であり患者に話しかけながら悟られないようにして触診すること。
* フリーエアが少量でも腹水貯留が大量の場合もあり、この時は緊急手術となる。エコー/CTではfluid collectionの所見にも注意。
* CTを見たときはfull stomachかどうかも見ておくこと。食物残渣が腹腔内に漏れている場合は緊急手術。
* CT/エコーが使えるようになって、腹腔穿刺の意義は少なくなった。
* 上部消化管穿孔でのガストログラフィンを用いての透視はいまでも有用。

治療 : 原則として緊急手術となるが、下部消化管穿孔は一般に上部にくらべ予後不良

posted by ヨン at 23:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 消化器

2008年11月16日

イレウス

実際上、機能的イレウスが見られることはまれ。向精神薬服用患者にたまに見られる。当科では、イレウスによる開腹術50例中になんら所見なく機能的イレウスであったとかんがえられるものは1例程度。

* 腹部手術既往がなく大腸閉塞が疑われる高齢者の場合はまず大腸癌を疑う。大腸ファイバーは施行可能。
* 大腸閉塞で小腸ガスまでみられることはそれほど多くない。腸閉塞の期間が長い場合や、バウヒン弁機能不全のときは大腸ガスと同時に小腸ガスが見られる。
逆に、小腸閉塞で大腸ガスまで増加することはない(もちろん、大腸ガスを認めることは正常である)。
* 腹部単純X線写真での所見…ニボー(イレウス発症6−8時間で出現)、小腸
ガス像、Double bubble sign (十二指腸、小腸起始部閉塞)
* イレウスチューブ留置は、外科医からみればそれほど必要とは考えない。ただし、閉塞部位の確定には有用。イレウスチューブ留置したために保存的観察期間が無用に長期化しないように。胃管は必要。保存的観察期間としては一般に3−5日、最長7日。その間は絶食絶飲で。
* 術後の癒着性イレウスの場合はイレウスチューブで出来るだけ保存的にみる時もあるが、高圧酸素タンク療法でも改善がみられず1週間経過すればやはり手術を考慮する。
* 経口下剤は禁忌。肛門座薬は利用可。灌腸は禁忌とはいはないが穿孔をまねく場合があり、使用しないほうが無難。プロスタルモンも穿孔を招く恐れ(本剤の適応は麻痺性イレウスである)。
* 保存的にみている期間中に白血球、血小板減少(DIC所見)や、穿孔をきたせばもちろん緊急手術。
* 絞扼性イレウスを疑う場合…デファンスが出現、CPK/GOTの上昇、プレDIC所見(WBC/血小板減少)などが見られる場合は絞扼を疑う。また、鎮痛剤無効な激痛や、所見/データと比較して不釣り合いな苦悶を呈する時も要注意。


posted by ヨン at 22:00| Comment(4) | TrackBack(0) | 消化器