2008年11月09日

気管支喘息

1.診断
聴診上呼気性喘鳴が聴取されれば、呼吸困難の訴えなくても発作と診断。
咳嗽の増加、喀痰分泌量の増加が発作の初期症状であることが多い。
喘鳴、呼吸困難があれば発作の診断は確定。

2.重症度評価
a. 小発作:呼吸困難を訴えるが仰臥位可能、通常の会話可能
(ピークフロー予測値の70〜80%)
b. 中発作:呼吸困難を訴え、会話は可能であるが仰臥位になれない
(ピークフロー予測値の50〜70%)
c. 大発作:呼吸困難のために会話困難
(ピークフロー≦50%予測値、PaCO245torr以上 PaO260torr以下)
d. 重積発作:チアノーゼ、会話不能、呼吸音消失


大発作患者で呼吸音や喘鳴の聴取が出来ない場合は発作死が懸念されるため注意が必要

3.検査項目
  a.血液ガス分析
  b.心電図(心疾患の既往がある場合、不整脈が認められる場合)
  c.胸部X線写真(心不全、肺気腫が疑われる場合)
4.治療
治療開始前に薬物アレルギー(解熱鎮痛剤、抗生物質、ステロイド)の有無を問診

a.小発作: β2刺激薬をネブライザーで吸入。症状が消失し、無治療で1時間安定していれば気道閉塞の改善(ピークフロー≧70%予測値)を確認して帰宅。改善しなければ中発作の処置へ。
b.中発作: @ 自宅で治療を始めていない場合
β2刺激薬をネブライザーで吸入20〜30分おきに反復。20〜60分で症状改善、安定していれば(ピークフロー≧70%予測値)帰宅。症状改善しない場合は下記の治療を行う。
A 小発作でβ2刺激薬の吸入、テオフィリン経口投与にもかかわらず改善しなかった場合(ピークフロー≦70%予測値)
初期治療
・ アミノフィリン6mg/kg+等張液200〜250mlを最初の半量を15分で投与残りの半量を45分で投与.
・ ハイドロコルチゾン200〜500mg静注またはメチルプレドニゾロン40〜125mg静注.
・ エピネフリン皮下注(0.1%) 0.1〜0.3ml 虚血性心疾患、緑内障、甲状腺機能亢進症では禁忌
・ 酸素投与:経鼻で1〜2l/分
継続治療
・ アミノフィリン250mgを約6時間で点滴。中毒症状(頭痛、悪心、嘔吐、動悸)の出現で中止
・ ハイドロコルチゾン100〜200mgまたはメチルプレドニゾロン40〜80mgを6時間ごとに静注
治療後の措置
 1.反応良好: 喘鳴消失、呼吸困難なし(ピークフロー≧70%予測値を目安)が1時間続けば帰宅
 2.反応不十分: 軽度の喘鳴、呼吸困難の持続(ピークフロー<70%予測値)
治療の継続、4時間で改善しなければ入院
 3.反応なし: 著明で広範な喘鳴、呼吸困難が持続
治療の継続、ステロイド薬静注追加によっても2時間で改善しなければ入院
c.大発作 1.初期治療
中発作に準じた治療開始。
酸素投与はPaO280torrを目標にする。
これらの治療に1時間以内に反応しないときは入院。
2.継続治療
中発作の継続治療
d. 重積発作 1.気管内挿管、人工呼吸管理
ジアゼパムなどで鎮静し、必要により筋弛緩剤を用いて気管内挿管
吸入酸素濃度100%、吸気相:呼気相を1:3以上
その後PaO2を80torrを目標にFIO2を設定
2.発作改善の治療
エピネフリン(0.1%)を10倍希釈して挿管チューブより投与
薬物治療に抵抗するときは全身麻酔を考慮
3.中止の条件
意識が正常化し、自発呼吸で最大気道内圧が20cmH2O以下となれば抜管



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2008年11月16日

血痰・喀血

通常痰に血液を混じる、あるいはほぼ凝血塊ではあるが喀出に困難がない血痰の場合、救急処置として問題となることはないので(結核などに対する注意は必要だが)ここでは主に喀血について記す.
1.大量喀血とは
 迅速な処置が必要となる喀血の程度は、それにより患者が呼吸不全を来たし生命にかかわる状況となると考えられるものである.一般的には以下のように定義されることが多い.

24時間以内に600ml、1回の喀血で500ml以上
少量ずつだが数日間で1000ml以上
1時間に150ml以上の割合で、1000mlの喀血

というものだが、定義に合わなくても診察時に呼吸不全を認めていれば迷わずに以下の処置を.

2.緊急処置
まず可能なかぎり本人・家族から既往疾患、喀血の程度を問診する.
気管支・肺疾患の既往
出血傾向の有無(心疾患の抗凝固療法中の場合もある)
喀血の起こり方と量(咳が先行した、発熱を伴っているなど)
胸部レントゲン写真の撮影、可能であれば2方向撮影を.
この時点で肺内の責任病巣が予想できれば患側を下に側臥位に.
気管支内視鏡を施行する(状況が許せば十分な喉頭麻酔を行う).
咳嗽が出血の増悪につながるためできれば専門医に依頼する.
内視鏡的に出血気管支が同定できれば気管支鏡の先端で気管支入口部を塞ぎ3分ほど経過を見る.
新鮮血の出血が止まっていれば患側を下にした側臥位で入院
出血気管支内にトロンビン液5000単位を注入する場合もあるが鉗子口用のチューブなど特殊な器具を要するので専門医への相談を.
   新鮮血の出血を認めなければ無理に血塊を吸引せずに処置を終了し、患側を下にした側臥位とし鎮咳剤を処方して通常の診療時間帯まで保存的に診る.ただし意識の無い患者の場合は気管内挿管の後以上の吸引処置を行う.

 喀血の場合その死亡原因はほとんどが吸引血液や凝結塊による窒息死であるので、できるだけ健側肺への気道を確保することを心がける.ちなみにGroccoらは48時間以内に600ml喀血した患者の死亡率は37%と報告している.

 血痰のみの場合は緊急に入院させる必要はなく、アドナ(100)3錠、トランサミンカプセル(250)3カプセル分3、鎮咳剤を処方し翌日の呼吸器外来の受診を指示すること.ただし患者には結核の可能性があり若年者との濃厚な接触を避けることと、血痰の増悪を認めれば速やかに受診するように指示することを忘れずに.
3. 喀血の原因
 救急外来ではその原因が結核である場合や、いくつかの感染症を合併している可能性などの点を考慮すれば、原因を詳しく追及することは業務上病棟当直の仕事となり、その原因疾患も多彩であるためこの点については成書を参照されたい.くれぐれも感染症に関する注意を怠らないように!!



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気腫

胸腔とは胸膜で囲まれた左右の閉鎖空間をさすがここに空気が貯まった状態を気胸と呼ぶ。それ以外の組織間に気体が存在している状態を気腫と呼んでいる。胸部外傷では縦隔気腫と皮下気腫の二つを見逃さなければよい。とにかく気腫の原因になる気瘻がどこにあるか探せ。

胸部外傷では縦隔気腫がないかどうか必ずチェックする。単純レントゲンではわかりにくいことも多くかなり注意していてもそれと捉えられないことがある。換気のたびに頸部に皮下気腫が広がるというときはかなり重篤。中枢気道損傷が疑われるので間に合うなら気管支鏡下の挿管を考慮する。頸部は縦隔の連続であることを忘れないように。挿管の必要がなさそうなら(この時も血液ガスデータなんかあてにならない。あくまで呼吸状態から判断して)気腫の原因となる臓器を特定する

皮下気腫は触診で稔髪音といわれる独特の触感を知っていれば診断は容易。しかし忙しい救急処置で全身隈無く触りまくるわけにも行かず、またその発生源を知るためにも胸部レントゲンは必須である。

縦隔気腫はどこから

縦隔気腫は食道か気管、そして中枢気管支までの損傷を疑わせる。縦隔気腫に対してはドレナージができないので縦隔臓器損傷ならまず緊急手術になる。保存的に治癒したというような報告も見られるが保存的に見た方がいいと言うことではない。縦隔気腫を見たら上級医や専門医を呼んだ方がよい。

解剖学的には頸部縦隔と胸腔は隔離されている。しかし外傷時は非解剖学的というかそれら隔壁を横断して損傷が拡がる。本来縦隔気腫は気胸を伴わないが外傷の時は解らない。むしろ気胸が目立つ場合もある。気縦隔の所見は気胸の所見と見分けがつきにくい。至急CTを撮りましょう。

食道損傷が疑われる時

食道損傷では原則的に緊急手術を考慮する。外傷の場合のGolden Timeは胸腔内臓器に関しても腹腔内蔵器損傷と同じでピンホール程度の損傷ならまだしも気腫を伴うような損傷では保存的に治癒させるのは困難であろう。これも繰り返しだが胸腔内臓器の手術は左か右か胸をあける方を決めなければ手術にならない。特に食道の手術ではどこを開けるか重要である。食道損傷が疑われたら躊躇せず透視と内視鏡で損傷部位を確認する。食道損傷での内視鏡検査は禁忌ではない。もちろん送気は最小限で内視鏡検査は行うし、透視も必要なら胃管を使って行うのだ

気管損傷が疑われるとき

気管損傷も頸部気管と胸腔内気管で所見は異なるが特に頸部の皮下気腫が著しく目立つときは疑いを持って検査を進める。外傷性の気管損傷でも原則緊急手術である。挿管前に気管損傷を疑う状況であれば気管内挿管も慎重に行わなければ損傷部位を拡大してしまうので本来なら気管支鏡下に挿管が望ましい。頸部気管損傷では多くが頸椎損傷か頚動静脈損傷をともなっていて生きて救急外来に来られることは少ない。体表から損傷部位が判るようならいっそ気管切開とした方がよい。胸郭内気管あるいは中枢気管支損傷が疑われたら直ちに気管支鏡検査を行う。気管支鏡的に明かでない損傷であれば保存的に見られる可能性もあるが、ここで明かな損傷が判るようなら緊急手術とする。

胸郭内気管または中枢気管支損傷が疑われるとき

陽圧換気は病態を悪化させる可能性がある。挿管すべきかどうか、どの様な気管内チューブをどの位置で固定するか至急にしかも正確に判断する必要がある。自発呼吸でその場を凌げないような状態なら挿管せざるを得ないだろう。損傷部位を慎重に越えてその末梢側にカフを固定できれば最高だ。主気管支の損傷なら片肺挿管などで緊急避難的に換気を維持しよう。いずれにせよ早急に専門医を呼んだ方がよい。気管や気管支は端々吻合も可能である。その時は気管切開はしていない方が有り難い。(しかし命が最優先、救命のためなら躊躇してはいけない)


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2008年11月18日

肺炎

市中肺炎とは一般的社会生活を送っている人に見られる肺炎であり、健康人に多いが、高齢者あるいは、種々の基礎疾患(糖尿病、膠原病、ステロイド使用者など)も含まれる。
 およそ肺炎とは、発熱、咳、喀痰、胸痛、呼吸困難などの自覚症状(高齢者などは症状が乏しい場合がある)と聴診において呼吸音減弱やcrackleが聴取され、胸部X線写真上において急性に新たに出現したと考えられる浸潤影が認められたものと定義される。
 市中肺炎の患者に対してはまず重症度を判定し、臨床所見からおおよそ細菌性肺炎か、非定型肺炎かに大別し、基礎疾患があればその状態の把握を行う。
 日本呼吸器学会の呼吸器感染症に関するガイドラインでは、重症度の目安として表1のように高熱、頻脈、頻呼吸などのバイタルサインの異常や、脱水症状の有無をあげており、胸部X線写真上新たな浸潤影が肺野の広範囲に占めるものなども重症判定項目のひとつとしている。チアノーゼを呈しているもの、ショック状態、意識レベルの低下などがあればそれだけでも重症と考えられる。
 表2では検査所見での重症度の判定項目であり、白血球の著明増加や減少、CRP著明上昇、酸素飽和度もしくは動脈酸素分圧の低下などが重症度と相関しやすい。
さらに感染症の経過および、治療効果に重大な影響を及ぼすと考えられる基礎疾患を有するもの、65歳以上の高齢者は重症度を一段階重く判定する。重症と判定されるもの、中等症でも水分摂取困難、脱水症状を呈するものは入院とする。
その他、外来通院が困難な例や社会的にも入院適応が考慮されてもよい。
 外来受診時に良質な喀痰が得られるようであれば、喀痰のグラム染色と培養をする。
特に重症例では入院の際に血液培養も施行する。
 全身状態が良好で外来通院が可能と考えられる場合、細菌性肺炎か非定型肺炎かのおおよその判別が必要となる。
 表3のように非定型肺炎の場合、60歳未満である、基礎疾患がないかあるいは軽微、頑固な咳がある、胸部理学所見に乏しい場合が多い。検査成績では、末梢白血球数が正常である、グラム染色で原因菌らしいものがないなどが参考となっている。
以上よりマイコプラズマ肺炎、クラミジア肺炎群を疑う場合マクロライド、テトラサイクリン系抗菌薬を第一選択薬とする。
 一方、膿性痰があり、聴診にて湿性ラ音が聴取され、白血球増多、核の左方移動がみられ、胸部X線写真上不均等性浸潤影が認められるなど、細菌性肺炎群が疑われた場合は、このガイドラインでは、なるべく喀痰のグラム染色を施行して原因菌の推定をし、抗菌薬を選択するとしている。培養を施行してある場合、のちに第一選択薬が無効のときに原因菌の同定、耐性菌か否かの確認、選択薬の変更などに有用と考えられる。
 軽症もしくは中等症で脱水症状がなく食事摂取可能であれば、経口薬投与でよいと考えられ、(注射薬を考慮してもよい)翌日または週明けの呼吸器科外来受診とする。
 外来通院可能で、原因菌が不明の時は年齢、基礎疾患でも異なるが、ペニシリン系薬(β−ラクタマーゼ阻害剤も含む)、セフェム系薬を第一選択とする。基礎疾患、アレルギーなどの問題があれば、フルオロキノロン系も考慮する。
1. 胸部レントゲン写真および身体所見による肺炎の重症度判定
軽 症中等症重 症
I. 胸部X線写真上
  陰影の広がり
1側肺の1/3まで軽症と重症いずれにも該当しない1側肺の2/3以上
II. 体 温37.5℃以下38.6℃以上
III. 脈 拍100/分以下130/分以上
IV. 呼吸数20/分以下30/分以上
V. 脱 水(−)(−)または(+)(+)
判 定3項目以上を満足3項目以上を満足


2.検査成績による肺炎の重症度判定
軽 症中等症重 症
白血球1万/mm3以下軽症と重症いずれにも該当しない2万/mm3以上もしくは
4千/mm3未満
CRP
PaO2
10mg/dl未満
70mmHg以上
20mg/dl以上
60mmHg以下、
SpO2 90%以下
判 定2項目以上を満足 2項目以上を満足


3.細菌性肺炎と非定型肺炎との鑑別
症状、所見1:60歳未満である
2:基礎疾患がない、あるいは軽微
3:肺炎が家族内、集団内で流行している
4:頑固な咳がある
5:比較的徐脈がある
6:胸部理学所見に乏しい
検査成績7:末梢白血球数が正常である
8:スリガラス状陰影またはskip lesionである
9:グラム染色で原因菌らしいものがない


 症状、所見からは6項目中3項目、検査を含めた9項目中では5項目を満たしていれば、マイコプラズマ肺炎、クラミジア肺炎群が疑われる。


posted by ヨン at 01:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 呼吸器