2008年11月08日

頭部挙上試験

失神の鑑別の一つであげられる血管迷走神経性失神の診断に役立つ検査です。
迷走神経の反射によって生じる失神ではこの検査で失神が誘発されます。
無理矢理失神させる面もありますからかなりきついテストです。

ただ、失神は命に関わることもあるので充分な精査は必要です。
まして、血管迷走神経性失神は若い方にも多く、
ちょっとしたことで失神するようではその時点で責任ある仕事につけなくなることもあります。
そのためにも早めに原因を精査し、
それなりの対応を考えるのは納得することです。

Head-Up Tilt Test(HUT)(頭部挙上試験)の手順
1.仰臥位で固定

2.60゜で10分間ほど待機、様子を見て80゜の傾斜にして20〜45分間待機(状況によってはもう少し長く)

3.(1)失神が生じた場合
    直ちに中止し血管迷走神経性失神と診断可能
    〔参考〕
    失神しなくても
    Kapoorは収縮期血圧≦90mmHg、心拍数≦60bpmで診断
    Calkinは収縮期血圧≦80mmHg、心拍数が5bpm以上の低下で診断としているものもある
  (2)失神が生じない(異常がでない)場合
   次のステップ4に進む。

4.Isoproterenol(イソプロテレノール)を静注か輸液する
  1μg/minから適宜0.5μg/minずつ失神が生じるか4μg/minに達するまで漸増する
  プロタノールL注ならば200μg/mlなので、5%ブドウ糖49ml加えて4μg/mlの濃度のものを作る。1μg/minならば15ml/hで0.5μg/min増加するためには7.5 ml/h増加して最大の4μg/minには60 ml/hとなる。

5.イソプロテレノールの離脱について
  Edrophonium chloride、nitroglycerin、esmololなどを使う

6.自律神経失調症(血管迷走神経反射性失神)の治療薬
  βブロッカー、disopyramide、theophylline、midodrine、fludrocortisone、
selective serotonin reuptake inhibitorsなどを使用する


さて、薬の治療法以外に治療はないのか。
血管迷走神経反射性失神は疲れているときにより起こりやすいです。
日頃の生活週間を整えるのは大切です。

万が一幻暈が出たら、その時点で涼しいところで休むのもいいと思います。

今、動く前に少し水分を含むと出にくくなると言われています。
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急性肺血栓塞栓症

急性肺血栓塞栓症(acute pulmonary embolism : acutePE)
<原因>
臨床的に問題になる肺梗塞の90%は下大静脈系深部静脈血栓症(deep venous thrombosis : DVT)由来である。またDVT症例の30%に臨床的に問題になるPEが合併しており、PEはDVTの合併症であるといえる。炎症を伴うDVTでは下肢の発赤・腫脹などの症状より診断可能であるが、こういった病態では静脈血栓は局所で癒着しているため凝血塊が一度に遊離しにくく、臨床上問題になる急性肺血栓塞栓症の頻度は少ない

<自覚症状・他覚所見>
本症に特異的な自覚症状や他覚所見はないが、突然発症した呼吸困難・胸痛を訴えた症例には、必ず鑑別疾患として本症を念頭におく。あわせて後述のようなリスクファクターを考慮すべきため、可能な限り詳細な病歴や既往歴の聴取が必要である。血流遮断の程度により下のように重症度が分類される。

重症度I
minor PE
II
submassive PE
III
massive PE
IV
fulminant PE
臨床症状一過性、
呼吸困難、
胸痛、血痰
持続的、
突然の呼吸困難、
胸痛、頻脈、
過呼吸
進行性、
重篤な呼吸困難、
頻脈、過呼吸、
失神、チアノーゼ
進行性、
心原性ショック、
心停止
血圧正常正常〜軽度低下低下高度低下
PaO2正常80mmHg程度< 70mmHg< 60mmHg
心エコー正常軽度右室負荷右室負荷重得な
右室負荷
平均
肺動脈圧
正常正常〜軽度上昇20〜30 mmHg> 30mmHg
肺動脈
造影
の欠損
< 25%25〜50%> 50%> 66%


<リスクファクター>
a) PEの既往歴
 過去の治療歴が1回あれば、抗凝固療法下でも6ヶ月以内の再発率が10%、2回以上であれば20%におよぶ。既往歴を有する症例に大手術・長期臥床・悪性腫瘍などの新たなリスクファクターが加わった場合、PEが再発する可能性が高くことを念頭に置くべきである。
b) 大手術・整形外科的手術や血管造影後
 股関節および膝関節置換術はリスクが高く、特に前者では50%程度との報告がある。
 術後や血管造影後の院内発症例では安静解除後の初めての歩行・排尿・排便に関したものが多く、この状況で症状が出現したものは本症を念頭に置くべきである。
c) 長期臥床や過度の安静
d) 脊髄損傷
 外傷性脊損、特に下肢麻痺を伴う例ではDVTのリスクが高く頻度は38%程度との報告もある。
e) 骨盤・大腿骨の骨折
f) 悪性腫瘍
 悪性腫瘍の手術を施行され場合、他の原因で手術を施行された場合に比して、DVTの頻度が2−3倍になるとされている。進行癌自体もDVTのハイリスクである。悪性腫瘍によってはそれ自体が凝固因子や線溶抑制因子を産生するものもある。抗癌化学療法による内皮障害や、抗癌作用をもつホルモン療法による血栓形成促進も知られている。
g) 産褥期
 妊娠中は問題になることは少ない。産褥期には約20倍程度発生頻度が上昇する。
h) 経口避妊薬などのホルモン剤
 薬剤中のエストロジェン量が増加するに従いリスクが上昇する。閉経期補充療法を施行されている女性ではリスク増加はみられないが、前立腺癌治療薬として使用されているエストロジェン製剤は高用量であり、リスクファクターとなりうる。
i) 血液学的異常
 AT―III欠乏(異常)症、プロテインC欠乏(異常)症、プロテインS(異常)症、活性化プロテインC(activated protein C : APC)の抗凝固作用に対する抵抗性、抗リン脂質抗体症候群、等の疾患では血栓塞栓を多発する事がある。

<各種検査>
a) 血液検査
 古典的なtrias(LDH上昇、総ビリルビン上昇、GOT正常)を認めることはまれである。
 D-dimerが正常であれば本症を否定できる。
b) 動脈血ガス分析
 本症により頻呼吸、低酸素血症が高頻度に出現するため、PaO2およびPaCO2の低下を来すことが多いが、重症例でもPaO2 80 Torr以上を保持している症例も1割程度みられることより、特異的所見とは言い難い。AaDO2(肺胞気動脈血酸素分圧較差)の開大がより診断的価値があるとされているが、肺塞栓症例の14%は正常AaDO2を示すという報告もある。
c) 心電図
 古典的な所見は、洞性頻脈・S1Q3T3・右胸部誘導での陰性T波、時計方向回転などの急性右心負荷所見を認めるが、右軸偏位、一過性右脚ブロック、肺性P、等を呈する症例もある。いずれも急性期のみで肺動脈圧低下とともに改善することが多いが、右胸部誘導での陰性T波は第2病日以降に出現し遷延することが多い。
d) 胸部X線
 古典的な楔状陰影は稀であり、他疾患との鑑別には有用である。
e) 心エコー
 閉塞肺血管床の大きな症例では、右心室圧の上昇から右室拡大や心室中隔扁平化による左室圧排がみられる。肺動脈収縮期圧が30mmHg 以上になれば右室拡大が出現するようになるとの報告もある。
f) 肺シンチグラム
 肺血流スキャンと肺換気スキャンがある。肺血流スキャンは肺血栓塞栓症に対する感度が高いが、特異度は低く肺実質病変でも血流欠損を認めることが多い。肺血栓塞栓症では換気障害を認めない血流欠損を得られることが多く、肺血流スキャンの低い特異度を補うため、肺換気スキャンを併用する。このV/Q mismatchingの所見自体はPEのスクリーニングには有用であるが、false positive例が約1割ほどあり、また両スキャンを同日に施行できないため、緊急時の確定診断としての価値は低い。
g) 肺動脈造影
 確定診断としてはもっとも精度が高い。造影上血栓による血流途絶や造影欠損をもって確定診断とする。同時に肺動脈圧・右室圧などの測定も可能で、本症の重症度を判断することも可能である。肺動脈造影の死亡率は0.2〜0.3%との報告があるが、死亡例はいずれも右室拡張末期圧18〜20mmHgの最重症例であったという。最近では造影剤の改良により、より安全な検査法となっていると思われる。
h) 造影CT
 非観血的に肺動脈造影欠損として血栓を証明しうる。ただし両側主肺動脈・右中間幹・両側下行枝など中枢部の血管に限られることや、予定される肺動脈造影などで使用する造影剤の総量を考慮する必要がある。

<治療>
血行動態的に安定していれば血栓溶解療法や抗凝固療法を、血行動態的に不安定でショック状態を呈しているなら、直ちに経皮的心肺装置(PCPS;percutaneous cardio pulmonary support)を装着し血栓摘徐術を考慮する。

a) 抗凝固療法
 頭蓋内・消化管・眼底などでの出血の危険性がない例では、直ちに抗凝固療法を開始する。急性期にはヘパリンを、慢性期にはワーファリンを使用する。
i) ヘパリン
 本症を疑った時点で5000〜10000単位を静脈内投与(bolus)し、診断確定後1300〜1600単位/時で持続点滴静注を行う。APTTは対照の1.5〜2.5程度とする。血栓の安定化に必要な約2週間程度続行する。従来のヘパリンはフィブリノゲンの血清蛋白との結合により抗凝固能が減弱するが、低分子ヘパリン(フラグミン)はこのような作用はなく、有用かつ比較的安全とされている。
ii) ワーファリン
 ヘパリン療法に引き続き施行する。治療域に達するまでに日数を要するため、ヘパリン投与中から5〜7日程度の重複投与とし、INR 2.0程度のコントロールとする。少なくとも3〜6ヶ月以上使用する。

b) 血栓溶解療法
 欧米ではPEに対するウロキナーゼやt-PA等の有用性が確定しているが、本邦では大規模試験のデータはない。特にt-PAは血栓選択性に作用するため、全身の出血傾向を招来する事がウロキナーゼに比して少なくやや古い血栓にも有効とされている。しかし本邦では保険医療上PEに対してはウロキナーゼ60000単位の使用が認められているのみである。当施設では肺動脈造影時に確定診断がつけば、引き続き肺動脈カテーテルよりウロキナーゼを緩徐に肺動脈内投与している。

c) カテーテルによる血栓除去術
 肺動脈造影時に主肺動脈など中枢側の血栓は、カテーテルを用いた血栓吸引術によりある程度は除去することが可能である。血栓溶解療法が禁忌である症例や血栓溶解剤を投与し終わっても中枢側に血栓が残余している症例に適応がある。

d) 外科的治療
 循環動態が悪化した重篤な症例ではPCPSの迅速な装着が必要である。PCPS下に血行動態が安定していれば血栓溶解療法を選択するが、外科的な緊急血栓摘除術も考慮する。

e) 下大静脈フィルタ
 抗凝固療法が禁忌である症例や、心肺機能の予備能が著しく低下しているためわずかな血栓でも致命的になる症例、DVTのため反復してPEを来す症例などには経皮的に下大静脈にフィルタを留置する。
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心筋梗塞の鑑別診断と初期治療

1. Acute coronary syndrome:急性冠症候群
不安定狭心性・急性心筋梗塞・心臓突然死を包括した概念であり、その発症には冠動脈粥状硬化の粥腫破綻と血栓形成および崩壊血栓によるによる血栓性閉塞が重要な要素になっている。冠血流が一時的または不完全に閉塞して心筋虚血が生じるが、心筋壊死まで至らないものを不安定狭心性と呼び、心筋梗塞へ進展する可能性が高いため、救急外来では適切な対応が必要である。

2. 心筋梗塞の診断
心筋梗塞の確定診断は典型的な胸痛・心電図変化・心筋逸脱酵素の確認であるが、予後に関わる早期の再還流療法が求められている現在においては、これらすべての変化を確認した時点での治療開始は遅すぎる。よって疑診例も含めた治療の開始あるいは、院内での経過観察が必要となる。
【2-1 胸痛の性状】
狭心症・心筋梗塞の診断の根幹をなすものであり、症状によりかなりの部分は鑑別可能である。ただし非定型的胸痛患者の一部には狭心症・心筋梗塞患者が含まれるので注意を要する。また無痛性のこともあり(無痛性の心筋梗塞は糖尿病患者・高齢者などに多い)、嘔吐・気分不良などの漠然とした症状のこともある。
(@)典型的症状:
激烈で持続的。発作の起こり方は大動脈解離のように最初が一番強いというわけではなく徐々に強くなってくる。
性質は重い痛み。胸骨の裏側の絞扼痛。左下顎・肩・上腕・心窩部に放散することがある。痛みの持続時間は30分以上数時間以内。
体位による変動や咳・深呼吸による増強はない。ニトログリセリンは通常無効である。
(A)胸痛以外の症状:
嘔気・嘔吐・冷汗・呼吸困難・動悸・めまい・下痢・便意などを合併したり、稀に胸痛ははっきりせず、これらの症状のみを訴える場合もある。
(B)非定型的胸痛:
鋭いチクチクとした痛み。秒単位で消える痛み。物や水を1-2回飲み込むことにより数秒以内に改善する不快感。胸壁の圧痛を伴う痛み。
【2-2 心電図所見】
心電図は簡便で非侵襲的にしかも迅速に施行でき、また繰り返し記録することが可能である。典型例では即刻診断可能であるが、非典型例あるいは不安定狭心性例では徐々に変化してくることもあるので経時的変化の観察は重要である。
完全左脚ブロック、WPW症候群などがあると異常Q波は出現しないがST-T変化は認められるので、以前の心電図との比較または経時的変化を見れば診断可能であるが、早期診断の観点からすると、特に症状が持続している場合は早めに専門医に相談すべきである
(@)異常Q波:
QRS振幅の1/4以上、幅が0.04秒以上の異常Q波があれば心筋梗塞を疑うことができるが、出現するのに数時間を要するため、胸痛出現早期から認められる場合は、陳旧性心筋梗塞が関係している可能性もある。
≪鑑別すべき状態≫正常人でもV誘導に深いQ波は認めることがある。肥大型心筋症・拡張型心筋症・心筋炎・肺気腫・肺塞栓・左脚ブロックでも認められる。
(A)Hyperacute T wave change:
心筋梗塞の超急性期にST上昇に先だって、一過性にT波の急峻な上昇を認めること。典型的な症状が伴えば心筋梗塞の可能性があり、早期再灌流療法を行うチャンスがあるため、すぐに専門医に相談すべきである。
(B)ST上昇:
2誘導以上でのST上昇(上向き凸型)。特に異常Q波かR波の減高を伴う場合には可能性が高い。aVRを除く全誘導にてST上昇が見られ、しかも異常Q波かR波の減高がない場合には、むしろ心外膜炎の疑いがある。また下壁梗塞の場合reciprocal changeとしての前胸部誘導の著明なST低下に目を奪われ、U・V・aVFの軽度のST上昇を見逃すことがあるので注意を要する。
再灌流療法のgolden timeと言われている発症から6時間以上経過している患者でも症状の持続あるいはST上昇が見られれば再灌流療法の適応となりうる。
≪鑑別すべき状態≫早期再分極症候群・左室肥大や左脚ブロックのV1,2誘導。脳出血などの脳血管障害、カテコラミン心筋症
(C)ST低下:
異常Q波を伴ってこない場合心内膜下梗塞とよばれるが、reciprocal changeとして認められる場合がある。またV2,3でST低下が著明でR/S >1の場合は高位後側壁梗塞を疑う。aVRを除く全誘導にてST低下を認める場合は、左冠動脈主幹部の病変や重症三枝病変を疑うべきである。
≪鑑別すべき状態≫心筋負荷・左室肥大・ジギタリス効果
(D)T波変化:
新たなT波の逆転あるいはそれまで陰性であったT波が陽転する場合も心筋虚血を表す。
≪鑑別すべき状態≫脳出血などの脳血管障害、カテコラミン心筋症。胆嚢炎。
【2-3 臨床検査】
古典的にはGOT, LDH, CPKの上昇であるが、心筋特異的ではなく、CPK-MBを同時に測定すべきである。ただしCPK-MBは発症数時間しないと上昇せず、また測定に1時間ほど要するので超急性期にはあまり有用ではない。これに比べてトロポニンTは15分ほどの簡便な迅速検査が可能で、またCPK-MBよりも心筋特異的であり、陽性であればその後の心事故の発生も多いので、入院させるべきである。但し、やはり発症3時間ほどしないと陽性にならないので、胸痛患者で症状が消失しても、救急部で経過観察すべきである。また発症後2週間ほどは陽性所見が得られるので、陽性であるからといって緊急冠動脈造影の適応になるとはかぎらない。
心エコー検査は高度心機能低下例、僧帽弁閉鎖不全・心室中隔穿孔・心室自由壁破裂例などの重傷例のスクリーニングには役立つが、陳旧性と急性の鑑別は困難であり、また小梗塞は見落としやすく、診断に必須な検査ではない。

3. 緊急冠動脈造影の適応(原則として本人の承諾の得られた場合)
冠動脈造影時にはヘパリンを使用し、また冠インターベンション後には強力な抗血小板療法を必要とするので、active bleedingのある場合は相対的禁忌である。但し心原性ショックの場合はただちに専門医に連絡すべき。
以下の場合は、冠動脈造影の適応となりうるので、速やかに循環器科の医師に相談すること。
(1) 発症12時間以内のST上昇(隣接する2誘導以上で0.1mV以上)
あるいは虚血性胸部不快感があり新たに左脚ブロックが生じた症例
(2)発症12時間以上24時間以内でST上昇があり虚血性胸部症状が残っている症例
(3)広範なST低下を示し虚血性胸部症状のある症例

4. 急性期の処置
冠動脈造影時にはヘパリンを使用し、また冠インターベンション後には強力な抗血小板療法を必要とするので、active bleedingのある場合は相対的禁忌である。但し心原性ショックの場合はただちに専門医に連絡すべき。
以下の場合は、冠動脈造影の適応となりうるので、速やかに循環器科の医師に相談すること。
(@)疑診例も含めて5%Gluceseによる血管確保。心電図モニター装着。
酸素吸入開始(動脈酸素飽和度が保たれていてもnasal 2l/m程度はながす、肺うっ血がある場合は適宜量を増やす)。
静脈ラインの確保時に同時に緊急採血(血計、GOT, GPT , LDH, CPK, CPK-MB, BUN, Cr, Na, K, Cl, Glu)。
*静脈ラインはなるべく左手からとる。
(A)血行動態が保たれていればNGの舌下を試す(冠攣縮によるST上昇の場合有効。但し、下壁梗塞で右室梗塞合併例は血圧低下を生じる事があるので注意)
心筋梗塞が疑われ、ショック状態の患者は気道確保、DOA等のカテコラミンの点滴、生理食塩水点滴(100ml/m以上)とともに循環器科の医師と相談し、緊急心カテを行う。
(B)心筋梗塞の可能性が高いと思われる場合はなるべく早急に循環器科の医師に連絡を取る。可能性が高いと思われ、かつ消化性潰瘍の既往がない場合はバイアスピリン2錠をかみ砕いて飲んでもらう。
(C)心カテの適応ありと判断されれば、速やかに心カテ室に搬入。
搬送中は除細動器付きの心電図モニターにて監視する。また心室細動、徐脈に備え、リドカイン・アトロピンを用意しておく。
(D)心筋梗塞の診断がつかない胸痛患者でも最低6時間はholdingして様子を見る。
(E)急性期の合併症の処置
 1)心室性期外収縮
 2)心室細動
 3)完全房室ブロック
 4)ショック
 5)肺水腫
posted by ヨン at 06:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 循環器

大動脈解離

大動脈解離 Aortic Dissection の診療=急性解離について=
突発する「激しく裂かれるような」背部、前胸部、腹痛、腰痛で発症する急性大動脈解離は大動脈内膜の亀裂により大動脈中膜が解離して発症し、発症2週間以内に大動脈破裂や種々の合併症で死亡することが多く、死亡例の 90% 弱 が心タンポナーデによる突然死(Stanford A)とされている。

 近年、血管外科の進歩により手術成績は著しく改善したが、解離部位、解離の進展により治療方針は異なり、早期診断、治療方針決定がその予後に大きく関係する。

 大動脈解離の治療原則は、急性期の破裂、心タンポナーデ、臓器虚血の防止で、Stanford A 型では急性期手術が原則であり、B 型は内科治療とされているが、当然、大動脈破裂、臓器虚血の可能性があれば急性期手術の適応となる。

 すなわち、主訴が突発して現れる本症は、急性心筋梗塞症などを鑑別診断にして救急外来へ受診することが多く、速やかな診断、適切な初期治療、急性期外科的治療の適否の判断、この3点が救急診療において必要とされている。

[1]診断
1. 大動脈解離とは;
中膜の深さまでの剥離が少なくとも 1cm 以上にわたって解離し「壁が2腔となった状態」
 true lumen and false lumen, entry=primary tear and re-entry
    解離性瘤= dissecting aneurysm

2. 解離の診断とは
@ 存在診断(高速 CT);「大動脈壁が2腔になっていることを証明すること」
拡がり、形態、サイズ (CT による3次元構築像はなお有用)
A 病型診断(経食道大動脈エコー図併用);
偽腔の血流状態、 Stanford 分類・DeBakey 分類(後項参照)、発症日時、誘因
B 合併症;
「多彩な臓器障害症状や遠隔した臓器障害が同時に見られる場合には本症を念頭に置いて早期診断することが本症の診療ににあたる医師の役割となる」
(解離が進展していく臓器それぞれに障害が生じる)
発症時症状(90-95% の患者で胸痛、背部痛、胸背痛;痛みの傾向:疼痛が移動、発症時が最も強い、労作後が半数)、意識状態、vital sign、心(頸部)雑音、尿量、四肢脈拍・血圧(著しい高血圧、上肢の左右差、上下肢の血圧差)、腹部所見、神経学的所見 の全てをチェックする。
<上行解離:前胸部、喉・首・顎の痛み>
心筋虚血(冠動脈、ECG ・ST ↓↑:急性心筋梗塞症は鑑別診断、且つ併発がある!)、大動脈弁閉鎖不全(呼吸困難・心不全)、心タンポナーデ(ショック)、脳虚血(頸動脈、視力障害・意識障害・麻痺)、上肢虚血、縦隔出血・胸腔出血
<下行解離:背部・腰部・腹部・下肢の痛み>
強く疑われる際は腹部エコー図を優先
脊髄虚血(対麻痺)、腸管虚血(上腸間膜動脈・腹痛)、腎動脈血行障害(腰痛・急性腎不全)、下肢虚血(下肢脱力)、縦隔出血・胸腔出血、後腹膜血腫

3. どのように分類するか
画像診断は外科的治療を選択すべきか否かに焦点を絞り、最小限に留める。

・ 解離の範囲;Stanford, DeBakey 分類
・ 偽腔の血流状態;
@ 心腔と交通する偽腔に血流がある= 偽腔開存型 "double barrel"
=急性期外科治療
A 急性期画像診断より偽腔に流入が見られず、急性期より既に偽腔が閉塞している=血栓閉塞型=内科的集中治療の適応可能
(vasa vasolum の出血=intramural hematoma を含む)
*交通孔であったと思われる画像上の痕跡=小突出 protrusion=血管造影で称されていた ulcer-like projection (ULP) についてはあくまで慎重に対応する(拡大傾向のフォロー)。
・ 発症時期;24 時間以内=超急性期、2 週間=急性期

4. まとめ :診断フローチャート「本症を疑うこと」
胸背部痛 → 鑑別診断:急性心筋梗塞、肺塞栓(胸痛の鑑別診断の項を参照)

ECG → 虚血性変化:心筋梗塞との鑑別・併発
  (Stanford Aの際の冠動脈入口部への解離の進展・断裂)
電気的交互脈(血圧・脈圧↓、奇脈)→ TAMPONADE !

胸部X線写真 → 縦隔拡大、大動脈石灰化、弓部上方偏位
(但し上行動脈の拡張は胸骨後面に生じるため1/6の患者の大動脈シルエットは正常)
気胸の除外、血胸の疑い

経胸壁心エコー図 → 心タンポナーデ、上行(下行、弓部)フラップ、大動脈閉鎖不全の有無の確認
腹部エコー図 ← DeBakey I, III a, III b (つまり II 型以外)に 実施

超高速 CT:存在診断、確診;造影検査故、アレルギー・腎不全に注意!
経食道心エコー図: 動的情報=Doppler による血流情報・偽腔の安定度評価に不可欠
但し、十分な降圧・鎮痛/鎮静の上で行う。
→偽腔血流あり、Stanford A → 外科治療
B → 合併症あり → 外科治療
なし → 内科治療
→偽腔血流なし→ 小突出像あり、拡大あり → 内科治療後 外科治療
小突出像なし → 内科治療

* 大動脈造影= 依然有用な検査ではあるものの解離悪化・破裂の誘因となりうるため、第一選択にはならないが、分枝血流の障害の有無の評価に最も優れ、臓器障害が強く疑われる際に、また緊急手術を前提として外科医とともに実施することが多い。
IV-DSA は大動脈への障害の危険がなく有利。

* MRI = 本法一つで Echo, CT, 大動脈造影の情報が得られるが、長時間要し、呼吸器、モニター装着下での撮像に問題があるため、急性期使用は限定される。

* 経食道エコー図はプローベと Aorta の間に気管・気管支がある 一部のみは死角になる。

Stanford 分類DeBakey 分類
A: 上行解離I : 上行と下行に解離が広がる
II : 上行に解離が限局
B: 下行以下に
  解離が限局
III a : 下行・横隔膜上に解離が限局
III b : 下行・横隔膜下に解離が広がる


[2]初期治療
1. 緊急降圧療法:
(1) 診断が確定次第、速やかに開始。
時間尿 1ml/kg を目標に疼痛が軽減するまでSBP<120mmHg を保つ
経口投与 (静脈ラインが確立するまでの一時的治療)
: ニフェジピン カプセル 5 mg (アダラート5(R))舌下投与
経静脈投与
: ジルチアゼム(ヘルベッサー(R))5-15μg/kg/min. DIV
ニカルジピン(ペルジピン(R))10μg/kg, IV:速効、DIV
(2-10μg/kg/min)へ移行。
ニトログリセリン(ミリスロール(R))0.1-5μg/kg/min. DIV :
降圧作用は緩徐
プロプラノロール(インデラル(R)): 0.5mg IV (最大 0.15mgまで)
[禁忌] 気管支喘息、糖尿病性ケトアシドーシス、徐脈、ブロック
トリメタファン(アルフォナード(R)):0.5-5mg DIV
[禁忌] 閉塞性動脈硬化症、腸管麻痺には禁忌。筋弛緩作用有り 、呼吸不全に注意。
【注】 ニカルジピン、ニトログリセリンにて降圧をはかる際には、陰性変時作用・変力作用を有するプロプラノロールを併用する。

2. 疼痛管理:
必要に応じて鎮痛・鎮静;塩酸モルヒネ(R) 5-10mg IV
人工呼吸管理を要する際も十分な鎮静を行う。

3. ショック対策:
破裂・心タンポナーデを想定し、輸血、救命蘇生用具を手元に用意。

心嚢穿刺によるタンポナーデの解除は、昇圧から解離の悪化を招来し、血行動態が安定していれば施行せず、可及的速やかに手術を実施する。しかし、血行動態が破綻した際には、この解除無しには救命は困難なため、心嚢穿刺を実施する。この際にも排液は血圧に留意し、過度に昇圧しない最小限度の排液に留める。
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