2008年11月08日

トッド麻痺

ほとんどすべてのけいれん発作は比較的短く、
数秒から数分間続くだけである。
大部分は2〜5分の間である。
発作が終わると、
頭痛、筋肉痛、奇妙な感覚、錯乱、深い疲労感などが生じる。
これらの影響は、発作後状態と呼ばれている。
中には体の片側の力が抜けて、
その脱力感が発作よりも長く続く場合があり、
数分、数時間、ときとして数日間、上肢、下肢あるいは身体半側に一過性の運動麻痺(てんかん後一過性麻痺:transitory postepileptic paralysis)をきたすことがあり、
これをトッド麻痺と呼ぶ。

トッド麻痺は痙攣重積後に一過性に生じる麻痺である。
なんら誘因なく、
あるいは軽いかぜ症状などをきっかけとして、
それまでまったく健康であった乳幼児や小児が突然に意識障害や半身痙攣などを起こし、
髄液にもはっきりとした炎症所見がなく、
原因不明のまま急性期が過ぎたのち片麻痺を残す急性小児片麻痺とは区別して用いる。


麻痺はてんかん異常放電の初発部位に一致して起こる。
したがって発作を目撃しない場合でも、
麻痺の存在により、
てんかんの源となった脳障害部位を推定できる。
てんかん発作中、脳血流量は増加するが、発作後は低下する。
てんかん発作直後にみられる脳局所の神経活動の低下は、
同部位で確認される脳循環代謝量の急速な低下、
乳酸蓄積などと関連するものと推定される。
posted by ヨン at 06:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 脳・神経

脳梗塞の重症度と予後

脳梗塞・脳出血患者のStroke Scale
(NIH Stroke Scale, Japan Stroke Scale,
modified Rankin Scale)を用いた重症度、予後の検討

分担研究者 棚橋 紀夫 慶應義塾大学医学部神経内科
(研究報告は ⇒ こちらから

研修医に成り立ての僕にはNIHSSと言われてもまずピントこない。
脳梗塞のNIHの脳梗塞の分類ってのは知っている。
機序による分類(血栓性、塞栓性、血行力学性)と臨床病型による分類(アテローム血栓性、心塞栓性、ラクナ、その他)に分かれている。
ただ、これだけでは患者の臨床的な重症度を推し量るのは厳しい。
そこで考えられているのが、National Institutes of Health Stroke Scale (NIHSS)やJapan Stroke Scale (JSS)、Rankin Scaleなどが考えられている。

NIHSSとRankin Scaleについては ⇒ こちらから
Japan Stroke Scaleについては ⇒ こちらから

これらは患者の臨床症状の重症度、予後、機能を評価するスケールである。これにより、脳梗塞を疑った場合、迅速な重症度の判定ができる。

ちなみに上記の論文では、ラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞、心原性脳塞栓症、脳出血の順に入院時、退院時のscoreが高く重症であったことが再度確認されている。それに加え退院時のRankin Scaleの結果からは、ラクナ梗塞がきわめて機能予後が良く、ついでアテローム血栓性脳梗塞、心原性脳塞栓症、脳出血の順であったとのこと。

実際に脳の画像を見ていると症状のないラクナ梗塞の画像は数多く見ているが、その他のものはラクナと比べて症状が出ていることが多い。

このことを知っていれば、ご本人やご家族に対して予後と重症度を含めた説明を迅速にできることだと思う(実際はそう簡単ではなかったけど…(´Д⊂グスン)
posted by ヨン at 06:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 脳・神経

2008年11月09日

脳出血

脳出血と一口に言っても種々のものを含むが60%を占めるのが高血圧性脳内出血である。この出血は高血圧により脳実質内小動脈に生じた微小動脈瘤あるいは脂肪硝子変性部から出血するといわれるが、正常血圧者でもみられる。高血圧性脳内出血以外の脳出血の原因として

血管障害 : 脳動脈瘤、AVM, もやもや病, 出血性脳梗塞
脳腫瘍 : 神経膠芽腫, 転移性脳腫瘍
感染 : 脳膿瘍, 静脈洞炎(静脈洞血栓症), 脳炎
血液疾患 : 血友病, 血液凝固異常
薬剤 : 抗血小板療法, 抗凝固療法
腎不全(透析中)

などがあげられる。出血の部位や大きさについてはCTで十分であるが出血の原因に関してはCTだけでは断定できない。ERではCT以上の放射線学的診断は原則として無理であるが, 脳動脈瘤破裂による脳内血腫の場合あるいはAVMからの出血が疑われる場合をのぞき緊急脳血管造影は必要なく入院後明朝まで待てる事が多い。ERでは緊急手術が必要かどうかの判断の方がより重要である。

A.意識レベルの評価
 緊急手術(減圧開頭血腫除去術)の適応は主に意識レベルにより決定される。Neurological grading(脳卒中の外科研究会)でgrade 3, 4では救命のため手術適応があり特にgrade 4bは時間的余裕がなく準備でき次第手術室に搬入となる。grade 5は脳幹反射が消失しており普通手術適応はない。なお呼びかけや体をゆすっても体動ない場合は痛み刺激(つめを圧迫)を与え反応をみる。皮膚への痛み刺激では頭蓋内圧はあまり上昇しない。頭蓋内圧上昇の一番の原因は気道閉塞である。

Neurological grading

JCS
grade 1alertness or confusion0〜1
grade 2somnolence10
grade 3stupor20〜30
grade 4asemicoma without herniation sign100
grade 4bsemicoma with herniation sign200
grade 5deep coma300


B.問診
 脳出血の患者は意識障害で搬送されている事が多いが問診は重要である。意識障害患者では家族よりできる限り既往歴を聴取する。近医通院歴あればそこに問い合わせるべきである。少なくともasthma,bleeding tendency, cardiac disease,cerebral appoplexy, diabetes mellitus, Liver disease(当地では, 酒は飲みます = 肝硬変), ulcer, renal failureなどの有無は必要である。ワーファリン、パナルジン、バファリンなどを内服中の場合は超急性期に血腫が増大する事がある。

C.バイタルサインのチェックと緊急処置
1.呼吸状態舌根沈下があり呼吸状態悪い場合は早めに気管内挿管をした方が良い。PaCO2上昇による頭蓋内圧亢進と誤嚥性肺炎の予防のためである。
2.血圧コントロール脳出血直後はほとんど例外なく血圧は上昇している。CT前ならば収縮期血圧200mmHg以上であれば降圧する。CTで脳出血と判明後は150/90mmHgを目標とする。アダラート舌下錠は速効性あるが、嘔吐著明の時は早めに注射薬(ヘルベッサー、ミリスロール)でコントロールした方が良い事もある。
3.輸液路の確保と採血CT室に搬送する前に必ず輸液路を確保する。
4.膀胱バルーンカテーテル留置意識障害ともなう場合は脳圧コントロールのため浸透圧利尿剤を早期より使う事になるので早めに留置する。意識障害にともなう尿閉が血圧上昇、不穏状態、不整脈などの原因となっていることがある。
5.嘔吐対策血腫の大きい場合、小脳出血、脳室内出血をともなう場合などは嘔吐しやすい。プリンペラン静注するが効果は不十分の事が多い。
6.痙攣皮質下出血、血腫が大きい場合では痙攣をおこしやすい。痙攣を起こすとhypoxiaにより脳のダメージがさらにひどくなるので痙攣時は抗痙攣剤を静注する(diazepam,ドルミカム)。
7.中枢性上部消化管出血中等度以上の意識障害例,潰瘍の既往歴のある者では出血性胃潰瘍(Cushing潰瘍)は必発である。ガスターを静注する。嘔気が落ち着いたら胃管を装入する。
8.輸液頭蓋内圧を考慮すると原則として輸液は最小限度で良い。出血と判明すれば止血剤を点滴のbottleに混注する。ただし高体温(中枢性過高熱,脳幹や視床の出血でみられる事がある)の場合はすぐに脱水(高Na血症)に陥りやすく点滴を早める。
9.浸透圧利尿剤意識清明例,あるいは小さな血腫の場合はあわてて浸透圧利尿剤を投与する必要はない。何らかの意識障害を有する場合はグリセロールを点滴する。脳ヘルニアをおこしかけている時はマニトールを急速点滴する。


D. CT
 CT室に搬送中にレベルダウンする事がある。意識レベル低下, 呼吸不全, 突然嘔吐, 痙攣などの形をとる。意識障害例,嘔気のある場合などは膿盆, アンビューバッグ,抗痙攣剤を必ず持参する。角をまがる時やCTの台に患者を移す時などにレベルダウンしやすい。CTで脳出血とわかれば速やかに脳外科医をcallする。

E.その他の補助検査
1. 胸X線単純写
2. 心電図 : Af著明ならば出血性脳梗塞を考慮した方がよい。
3. 頭蓋X線単純写 : 必ず3方向。

F.入院or手術
 以後は脳外科医が決定するが,緊急手術の場合は採血結果の催促をしていただけると幸いである。


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2008年11月16日

頭部外傷

頭部外傷の発生数は年間10万人当たり230と見積もられている.頭部外傷により発生する傷害は多様で,軽症から重症まで幅が広い.頭部外傷をそのメカニズムと病態,Glasgow Coma Scale,CT所見によって分類することで主要な病態の把握と治療が可能となる.

T:病態による分類
 頭部の損傷は頭蓋骨骨折と脳神経損傷に分けられ,脳損傷は局在性損傷と瀰漫性(広範性)損傷に分けられる.これらの病態は必ずしも単独でおこるわけではなく,複合損傷としてみられることが多い.
1) 頭蓋骨骨折
 頭蓋骨骨折の有無は外傷の大きさをはかる一つの指標となる.大きく頭蓋円蓋部骨折と頭蓋底骨折に分けられる.円蓋部線状骨折は骨折のみでは治療適応はない.開放性陥没骨折は通常6時間以内の外科治療を必要とする.非開放性陥没骨折の場合、鋭角に陥没している場合,頭蓋骨の厚さを超えて陥没している場合は外科治療の対象となる.頭蓋底骨折は耳出血、髄液漏,気脳症、鼻出血、顔面神経麻痺で明らかとなる場合が多い.両眼周囲のblack eyeや耳介後部のBattle徴候と呼ばれる出血斑がみられることがある.二次的脳損傷を伴わなければ外科治療を要さないことが多いが入院治療が必要となる.眼窩吹き抜け骨折は外力が直接眼球に加わり、眼窩骨折を来すもので,複視、眼球陥没を来たし、入院治療が望ましい.
2) 局在性脳損傷
 脳挫傷、頭蓋内出血,外傷性くも膜下出血が局所性脳損傷に属する.
 脳挫傷は脳出血,脳腫脹、脳偏位、頭蓋内圧亢進を来す危険性があり、入院の上厳重な観察、減圧のための開頭手術が必要となることが多い.特に重症例では緊急手術の対象となることもある.入院時軽度の出血性脳挫傷であっても遅発性に(24時間以内に)大きな脳出血を来し、血腫除去を要することも多く,入院の上厳重な経過観察が必要である.一般にGlasgow Coma Scaleが2点以上低下すれば何らかの異常が生じた可能性が高く、頭部CTでの確認が必要となる.
 頭蓋内出血は硬膜下出血、硬膜外血腫、脳出血に分類される.骨折した頭蓋骨からの僅かの硬膜外血腫,挫傷脳からの僅かな硬膜下血腫では手術適応はないが,入院経過観察は必須である.中硬膜動脈等の損傷による硬膜外血腫の場合、緊急開頭血腫除去術が必要であり、手術時期を逸せず救命すべき病態である.急性硬膜下血腫は挫傷による脳表動・静脈損傷、静脈洞や橋静脈による場合、緊急に開頭血腫除去術が必要となる.予後は脳損傷の程度により,Glasgow Coma Scale7点以下の急性硬膜下血腫の救命率は8点以上と比較して著しく低い.外傷性脳出血も受傷直後から重篤な意識障害、脳ヘルニア徴候、脳幹損傷を伴うものは予後が不良である.遅発性脳内血腫,表在性脳出血でmass effectを伴う場合、緊急開頭血腫除去術の適応となる.側頭葉血腫例では急速に脳幹圧迫症状を生じる可能性があり、時期を逸することがあってはならない.
 外傷性くも膜下出血のみでは外科治療の対象とならないが、脳挫傷を伴っている可能性が高く、厳重な入院経過観察が必要である.

3) 瀰漫性(広範性)脳障害
 瀰漫性(広範性)脳損傷は軽症例から重症例までみられ,脳震盪、瀰漫性軸索損傷、急性脳浮腫に分類できる.軽症脳震盪は記憶障害が主で,同じことを何度も尋ねたり、外傷性健忘を示すが、意識消失は伴わない.通常入院治療は必要ない.定型的脳震盪は6時間未満の意識消失を伴う.瀰漫性軸索損傷は軽症,中等症、重症に分けられ、軽症では24時間以内(通常6−12時間)の昏睡・半昏睡状態,中等症で24時間以上の昏睡・半昏睡状態、重症でさらに脳幹機能障害が加わるものと分類している.社会復帰率はGennarelliによれば脳震盪で100%,軽症瀰漫性軸索損傷で63%,中等症で38%、重症で15%である.Glasgow Coma Scale4-8点で60歳以下の場合,我々の施設では低体温療法の適応があると考えている.脳腫脹が強い場合は減圧開頭を行うこともある.低体温療法ではスワンガンツカテーテルによる心係数・肺動脈圧,頚静脈球酸素飽和度、動脈圧、頭蓋内圧、深部体温、脳温をリアルタイムに測定しながら、体温を33度程に保つことにしている.急性脳浮腫は小児に特徴的な瀰漫性脳障害である.軽症例であればマニットール点滴で軽快し,中等症でも気管内挿管の上過呼吸させることで軽快することが多い.

U:Glasgow Coma Scaleによる分類
 頭部外傷の重症度の評価は意識障害の程度により表現できると考えられる.それはGlasgow Coma Scaleで表せると言い換えられる.重症頭部外傷とはGlasgow Coma Scale8点以下のものと定義されている.

V:頭部CT所見による分類
 頭部外傷の程度と経過は画像診断で明らかとなる.Marshallらは重症頭部外傷のCT所見と予後がよく相関すると述べ、瀰漫(広範)性病変ではカテゴリー1の肉眼的異常所見のない場合、死亡率10%,カテゴリー2の脳幹周囲脳槽がみえ,正中偏位5mm以下の場合、死亡率14%,カテゴリー3の脳幹周囲脳槽消失で死亡率34%,5mm以上の正中偏位のみられるカテゴリー4の場合,死亡率56%としている.局在性病変では血腫手術例で死亡率39%,25ml以上の血腫,非手術例で59%,脳幹損傷例で67%としている.

posted by ヨン at 21:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 脳・神経