2008年11月18日

骨盤骨折

骨盤骨折は全骨折の5-8%を占め、必ずしもまれな骨折ではない。交通事故や高所からの転落事故などhigh energy trauma によるものでは、重篤な合併損傷をともない、頭部外傷とともに外因子の大きな要因となっている。骨盤環の2カ所以上に骨折を有する不安定型骨盤輪骨折では後腹膜腔出血が重篤な出血性ショックの原因となることが少なくないため出血に対する積極的な治療が必要となる。
【診断】
1 視診
骨盤が左右対象であるか、変形がないか、上前腸骨棘の非対称 下肢の肢位異常
   -----不安定骨折を疑わせる
会陰部の皮下出血斑
   -----尿道損傷、後腹膜腔大量出血
尿道口からの出血
   -----尿道損傷
腟(女性)からの出血
   -----骨盤開放骨折の可能性あり
2 触診
両側腸骨翼や恥骨結合部を前後左右に圧迫して異常可動性やれ轢音を触知する。
神経や血管などの軟部組織損傷を大きくする可能性があるため慎重かつ最小限に行う。
3 画像診断
A 単純撮影 
high energy による外傷患者、特に、意識障害やショックのある症例では、骨盤部の症状の有無にかかわらず骨盤のレントゲンを撮影する。通常、骨盤前後像のみを撮影し、骨折の存在とおおまかな骨折型を評価する。

読影ポイント


1)骨盤が左右対象か否か
2)恥骨結合の離開がないか---正常は1cm以下
3)骨盤輪の断裂の有無とその部位、転位の程度
3)寛骨臼の骨折がないか
4)第5腰椎横突起の骨折転位がないか---不安定型骨盤輪骨折を示す
5)仙棘靭帯や仙結節靭帯の付着部の剥離骨折がないか---不安定型骨盤輪骨折を示す
6)骨盤後方(仙骨、仙腸関節)の骨折や脱臼は見逃されやすいので注意---CTが有用


状態が落ち着き必要であれば正確な画像診断のため骨盤入口像、骨盤出口像、腸骨翼斜位像、閉鎖孔斜位像などを撮影する。

B CT scan  
単純撮影像のみでは診断の難しい骨盤後方部分の仙骨、仙腸関節の病態の把握に有用であり、骨盤輪の安定性の評価が可能である。また後腹膜腔出血、腹腔内臓器損傷の評価にも有用である。

C 血管造影
大量輸血必要例、後腹膜巨大血腫例、離脱困難なショック例では骨盤血管造影を行い出血源の確認が必要である。後腹膜出血の出血源は、主として、骨髄、骨盤静脈、仙骨静脈などの静脈系であるが、重症例では上殿動脈、内会陰動脈、外側仙骨動脈などの内腸骨動脈の分枝の損傷が重要である。

D 尿路系造影
血尿があり尿路系の損傷が疑われる場合には腎盂造影、膀胱造影、逆行性尿道造影が必要である。初期治療にあたって尿道口より新鮮な出血がある場合には尿道損傷の可能性がある。Foreyカテーテルの挿入操作で損傷部をさらに拡大する可能性があり注意が必要である。

E 不安定型骨盤輪骨折の評価
以下の所見がある場合は不安定型骨盤輪骨折として創外固定や内固定により骨盤を安定させる必要がある。

臨床的
1) 身体所見上、骨盤の著しい転位がある
2) 著明な後方部断裂のある場合
3) 徒手検査で片側骨盤の不安定性がある場合
4) 内臓、血管、神経の重度損傷が合併する場合
5) 開放骨折の場合
X線学的
1) 骨盤後方部の骨折の転位が0.5cm以上の場合
2) 後方骨折部がimpactionでなくgapを形成している場合
3) 第5腰椎横突起または仙棘靭帯の仙骨や坐骨棘付着部の剥離骨折がある場合
合併損傷
A 出血性ショック(15-40%)
 後腹膜出血を伴う重篤なショックは骨盤輪骨折例に多い。出血源は主として、骨髄、骨盤静脈、仙骨静脈などの静脈系であるが、重症例では上殿動脈、内会陰動脈、外側仙骨動脈などの内腸骨動脈の分枝の損傷が重要である。

B 尿路損傷(1-21%)
 大部分が尿道損傷であり恥骨結合を中心とした損傷例に合併し後部尿道損傷が多い。直腸診で前立腺の変位や異常可動性を触れる。Foreyカテーテル挿入に先立ち、逆行性尿道造影を行い損傷の診断を行うべきである。

C 末梢神経損傷(1.2-12%)
 仙骨骨折例に腰仙神経叢損傷、臼蓋後縁骨折(股関節後方脱臼)に坐骨神経損傷を合併することがある。
合併外傷
 骨盤骨折に直接関連しない合併外傷が高頻度にみられる。筋骨格系(下肢34%、上肢15%)、頭部(19%)、胸部(17%)、腹部(14%)、脊椎(14%)の評価が必要である。1症例あたり1.5部位であったという報告あり。
初期治療
1) 輸血、輸液
骨盤骨折に伴うショックはやや遅れて発現する傾向があり、来院時ショックがなくても上肢に輸液路を確保しショックにそなえる。骨盤骨折に伴う出血量は2-20単位、あるいはそれ以上である。
2)骨盤血管造影・経カテーテル塞栓術
予想出血量に見合う輸血や輸液、急速な大量輸血によってもショック状態から離脱できない場合には、動脈性の出血を考え、血管造影により出血源を確認し経カテーテル塞栓術を行う。
3)骨折の固定
不安定型骨盤輪骨折の場合、骨折の整復と安定化は骨髄性の出血を止めるばかりでなく、軟部組織の緊張をとり、転位により拡大した骨盤腔の容積を減少させ、タンポナーデ効果を高め、出血を抑制する。創外固定は侵襲も少なくタンポナーデ効果を損なわず急性期の不安定型骨折に対する固定法として有用である。
骨折部における止血が終わっても、なお血圧が安定しない場合は腹腔内の実質臓器や腸間膜からの出血を考える必要がある。


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2008年11月22日

脊髄損傷について

脊髄の外傷で一過性の麻痺を呈するが数分ないし数時間で回復するものは脊髄振盪といわれ後遺症は残さない。それに対して脊髄の挫滅がある場合は損傷高位より下位の知覚脱出と運動のマヒ、膀胱直腸の反射を含め脊髄ショックがあり初期は弛緩性のマヒとなる。受傷後24時間から3ヶ月以内に回復し下位髄節には次第に腱反射や病的反射が出現する。肛門反射、亀頭尿道球反射、足底反応、これらの反射が認められるようになれば脊髄ショックが終わったことを示す。もしも、肛門会陰部に知覚が残っている場合はsacral sparingを意味し不全マヒの証拠であり回復が期待できる。
 年間発生頻度は人口100万人あたり40人〜50人/1年間であり、男女比は4;1で男性に多い。原因は交通事故が約半数を占め、次に高所からの転落 転倒となっている。 損傷高位は頸髄損傷が3/4、胸腰仙髄損傷1/4を占める。麻痺の程度は下記のFrankelの分類が一般的であり、運動麻痺域のレベルは下記の支配髄節から判定する。
Frankelの分類について
A=完全マヒ : 運動知覚神経の完全なマヒ
B=知覚のみ : 知覚が一部残存し運動は完全マヒ
C=運動-useless : 知覚運動ともに一部残存するも歩行は不能
D=運動-useful : 知覚運動ともに一部残存し歩行が可能
E=回復 : 病的反射が残っているが神経学的には正常

代表的筋肉の支配髄節
上腕二頭筋 : 肘屈曲 =C5
手根伸筋 : 手関節背屈 =C6
上腕三頭筋 : 肘伸展 =C7
浅指屈筋 : 指屈曲 =C8
小指外転筋 : 指外転 =T1
大腿四頭筋 : 膝伸展 =L2
前脛骨筋 : 足部背屈 =L4
母趾伸筋 : 母趾伸展 =L5
腓腹筋 : 底屈 =S1

マヒの種類
 頸髄損傷では四肢麻痺(両上肢と両下肢の麻痺)、胸腰髄損傷では対麻痺(両下肢の麻痺)がおこる。 また、頸髄損傷では中心性頸髄損傷(初めは四肢麻痺を呈するが下肢の麻痺は軽く早く回復し上肢の麻痺が遅れて回復するタイプ)も比較的多い。
レ線所見
 頸椎では第1頸椎から第1胸椎まで側面で写っていることが原則であり、写ってなければ両手を引っ張り下げて再度撮り直す必要がある。
 椎体、椎弓、棘突起、横突起(腰椎)の骨折や脱臼配列の乱れの有無を確認する。また、軟部組織陰影-特にretropharyngeal space の腫張の有無を確認する。
 Hangman 骨折では頸椎が過伸展し軸椎関節突起間の骨折をおこす。
 Jefferson 骨折では頭部に垂直に力が加わり環椎の前弓と後弓の破裂骨折が生じる。
 軸椎歯突起骨折では環椎と歯突起との距離をみる。大人で3mm以下、小児では5mm以下が正常である。
レ線上骨傷の明らかでない頸髄損傷について
 頸髄損傷ではレントゲン上はっきりした骨折や脱臼がみられない場合もある。
 頸髄損傷の40%前後はこの骨傷のないタイプとされ、特に高齢者に多い。受傷機転は伸展損傷で顔面や前額部に外傷を伴うことが多い。またこのタイプでは上記の中心性頸髄損傷となりやすい。
脊髄損傷に対する急性期治療
 救命センター搬入時は頸髄損傷ではカラー等で固定されていることが多く、胸腰髄損傷ではストレッチャーで仰臥位で固定され搬入される。愁訴と症状から損傷レベルを推定し、必要なレ線を撮影したあとは、頸髄損傷では砂のうで頭頸部を固定し、胸腰髄損傷ではそのまま仰臥位安静とする。
 圧迫挫滅された脊髄自身に対する根本的治療はなく、脊椎の整復固定術は除圧効果は期待できず早期リハビリが目的である。浮腫防止の意味で大量のステロイド投与は急性期のみ効果があるとされている。

ステロイド大量投与療法
  急性期脊髄損傷に対してコハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム(MPSS)の大量投与の有効性についてBracken らが1990年に報告した。受傷後8時間以内の治療開始で改善が期待される。

投与方法: MPSSを30mg/kgを15分間で静脈内投与し45分間の休薬後、1時間量5.4mg/kgを23時間持続的に静脈内投与する。



排尿障害について
 受傷直後は脊髄ショックで尿閉を来たし、この期間は約8週間で急性期尿閉であり、その後核上性マヒでは自動性反射性膀となり無意識に周期的に力強い排尿がある。
 核下損傷の場合は自律性麻痺性膀胱と呼ばれ膀胱収縮力は弱く膀胱の収縮力のみでは膀胱をからにできない。尿路障害に対しては間欠的導尿法を定期的に行う。
 患者が排尿を自分でコントロールできるようにするのを膀胱訓練という。膀胱容量が200〜400mlで排尿後に50ml以下にさせる。自動性膀胱であれば排尿反射を誘発する手段を発見させる。自律性膀胱では腹筋の収縮、腹圧の利用、殴打法、手圧法等補助手段を必要とする。
腸管の機能
 中枢が膀胱中枢と似た部位のため同じような反応を呈する。受傷直後は腸の蠕動は消失する。肛門中枢の損傷では括約筋のマヒで大便失禁をきたす。上位損傷では頑固な便秘の傾向があり兎糞状となり用指摘便を必要とする場合がある。痙性が強い場合は蠕動不安を呈することがある。
呼吸障害
 第4頸髄節以上に完全マヒが起これば横隔膜は運動を停止し、人工呼吸をしなければ窒息死に陥り呼吸四肢マヒとなる。
 マヒが第5頸髄節以下にあれば肋骨呼吸は停止するが横隔膜呼吸で死は免れる。
 肺は不動の仰臥位によって肺うっ血、喀痰の喀出困難で肺炎発症の危険が多い。
体温調節障害
 異常に高いまたは低い体温をみる場合が多い。マヒ領域の発汗が停止し体温が40°〜42°と上昇することが多い。低体温は時に30°以下になることがあり、体温調節障害による障害といわれる。過高熱に対しては、麻痺域が無汗であるため解熱剤は禁忌でありステロイド剤、氷のうによる全身冷却を行う。
胃十二指腸潰瘍
 急性期、慢性期ともに出現する。交感神経遮断、副交感神経刺激により胃液分泌亢進で発生する。長期臥床によるストレス、ステロイドによる副作用も関連する。
 潰瘍が穿孔しても患者の訴えがないため診断が遅れやすい。
死亡原因
 頸髄損傷では急性期死亡 5 %、慢性期死亡 13 %とされ死因の第1位は呼吸障害、第2位は潰瘍穿孔である。胸腰髄損傷では急性期死亡 1 %、慢性期死亡 8 %とされ死因の第1位は腎合併症で3/4をしめ、第2位は潰瘍穿孔、第3位は静脈血栓肺血栓となっている。



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2009年01月14日

骨粗鬆(しょう)症薬が破骨細胞を増大

骨粗鬆(しょう)症治療薬アレンドロン酸ナトリウム水和物(商品名:フォサマックなど )を最長3年間使用した女性で、破骨細胞の増大がみられるほか、40個もの核をもつ「巨大」破骨細胞(複数の細胞が融合したもの)がみられることが新しい研究で報告された。通常、1つの破骨細胞にみられる核は7〜8個にとどまるという。

 これが何を意味するのかは不明だが、この薬剤はすでに5〜10年使用されており、ある時点で問題が生じてくることも考えられると、研究著者で米アーカンソー大学University of Arkansas for Medical Sciences(リトル・ロック)教授のRobert S.Weinstein博士は述べている。この知見は、米医学誌「New England Journal of Medicine」1月1日号に掲載された。

 「骨は活動的な組織であり、継続的に再形成および修復されている」と、Weinstein氏は説明する。この作用は2種類の細胞が担っており、破骨細胞が古い骨を溶解し、骨芽細胞が新しく強い骨に置き換えている。閉経後骨粗鬆症は、この再形成プロセスのバランスが崩れることによって生じるものであり、ビスホスフォネートと呼ばれる薬剤クラスの1つであるアレンドロン酸ナトリウム水和物は、破骨細胞の数を減らすことによってこのバランスの崩れを防止すると考えられていた。

 しかし今回の研究で、実際はそうではないことが明らかにされた。3年にわたる試験で異なる用量のアレンドロン酸ナトリウム水和物またはプラセボ(偽薬)を服用した健康な閉経後女性(40〜59歳)の骨の生検標本51例を調べた結果、最も高い用量(1日10mg)を服用した女性は破骨細胞の数がプラセボ群の2.6倍であることが判明。破骨細胞の数は、用量とともに増大がみられた。破骨細胞の27%が「巨大細胞」であり、薬剤使用の中止1年後にも認められた。

 著者らは、骨細胞は死滅するかわりに、融合するのではないかと仮定している。アレンドロン酸ナトリウム水和物は破骨細胞の死滅をスローダウンするが、破骨細胞の作用の機能や効果も減じるのではないかと考えているという。「この薬剤が有効であることに間違いはないが、効果を発する機序を把握することが重要だ」とWeinstein氏は述べている。ある研究者は、「7、8個の細胞が融合したものは骨からのカルシウムの溶解と再構築をより効果的に行う」という見解を述べている。

 同誌に掲載された米国食品医薬品局(FDA)のDiane K.Wysowski氏による別の論文(レター)では、アレンドロン酸ナトリウム水和物使用者の食道癌(がん)の報告が増えていることが指摘されている(米国で23例、ヨーロッパと日本で31例)。FDAに23例の報告があり、同薬が癌の発症を促すという十分な根拠はないが、ビスホスフォネートの副作用の1つとして胃食道逆流性疾患(GERD)を悪化させることがあるという。同薬の製造元であるメルク社のニュースリリースでは、臨床試験および市販後調査報告では同薬と食道癌との関連は示されていないとしており、Weinstein氏の研究については、同社の研究と矛盾するものではないとしている。ビスホスフォネートの使用についてはほかにも、心房細動、大腿骨の異常骨折および炎症性眼疾患などのリスク増大との関連が示されている。

HealthDay News 12月31日



思っていた機序とは別の働きで

治療を行っている訳ですか

興味深い事実ですね



実際に使われている薬剤の中でこのようなものは

おそらくいくつもあるんでしょうね


偉そうに言っても何もわかってないことばかりですね
posted by ヨン at 23:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 整形外科

2009年02月17日

新骨折治療法:骨細胞を注入

患者自身の造骨細胞を注入することで、骨折治癒が早まる、と発表された。

「骨折は自然治癒する一方、骨移植を必要とする程度まで骨癒合が遅れるケースも多い。骨移植が骨癒合の最善治療法であることに変わりはないが、造骨細胞注入法は代替治療法を提供する。造骨細胞注入法は、外科的手術は不要で、局所麻酔で実施できる。」と、今回の主任研究者であるDr. Seok-Jung Kim(Catholic University College of Medicine, Seoul)は述べている。

今回の論文は、64人の腕または脚骨折患者が、造骨細胞注入治療、または治療無しのグループに無作為分類された研究に基づいている。

造骨細胞は、骨折手術中に骨盤骨の骨髄から採取される。その後、特別な技術により、骨髄細胞が造骨細胞に誘発され、24日間かけて成長し、増数する。


造骨細胞注入治療グループの1か月目と2カ月目の治癒速度は、対照グループに比べ、注目に値するという。
当治療法は、患者があまり痛みを感じず、合併症もないとのこと。

今回の研究知見では、造骨細胞注入法は、腕や脚の骨折の安全で効果的な代替治療であると、Dr. Kim は結論している。



2009年2月13日(Reuters Health)


ほんとうかな?

そんなにうまくいくものなのでしょうか?


整形外科ではないのですが、

ちょっと疑問を持ってしまいます
posted by ヨン at 21:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 整形外科